クローバー♧ハート - 愛する者のために -


お腹の中に宿った悠を守るため、この町から逃げたあの日から

この町に帰ってくることが出来るなんて、夢みたい。

裕貴が動いたのか、お父さんである孝宏さんからの連絡はない。

きっと裕貴と由依さんが、上手くしてくれたのだろう


ここは私が幼い頃から住んできた場所であり、唯一両親との思い出が残る場所。

駅からバスに乗って、更に一時間。

町中から少し離れた緑に囲まれた場所の近くで、私たちはバスを降りた。



「はるさん、ココって――」

「こっちよ」

「ハル、ここ何処?」



見知らぬ場所で、悠も不安なのかもしれない。

繋いだ小さな手に、力が入るのが分かる。



「悠、本当のお爺ちゃんとお婆ちゃんに会わせてあげる」

「お爺ちゃんとお婆ちゃん?」

「それって――」



今の言葉で護くんは、この先に何があるのか理解したいみたい。

私は薄く微笑んで歩みを進めた。