お腹の中に宿った悠を守るため、この町から逃げたあの日から
この町に帰ってくることが出来るなんて、夢みたい。
裕貴が動いたのか、お父さんである孝宏さんからの連絡はない。
きっと裕貴と由依さんが、上手くしてくれたのだろう
ここは私が幼い頃から住んできた場所であり、唯一両親との思い出が残る場所。
駅からバスに乗って、更に一時間。
町中から少し離れた緑に囲まれた場所の近くで、私たちはバスを降りた。
「はるさん、ココって――」
「こっちよ」
「ハル、ここ何処?」
見知らぬ場所で、悠も不安なのかもしれない。
繋いだ小さな手に、力が入るのが分かる。
「悠、本当のお爺ちゃんとお婆ちゃんに会わせてあげる」
「お爺ちゃんとお婆ちゃん?」
「それって――」
今の言葉で護くんは、この先に何があるのか理解したいみたい。
私は薄く微笑んで歩みを進めた。

