片目を閉じ人差し指を唇に当て、茶目っ気たっぷりにそう言った神谷さん。
本来、護くんは依頼人ではないから守秘義務とは違うのかもしれない。
だけど、他人の口から言うのは躊躇われたんだろう。
聞けないとは、何となく思っていた。
でも、ほんの少しの期待を持って来ただけに落胆も大きい。
私は小さく溜息を吐いた。
「俺も、親友を裏切りたくはない。でも……ちょっと待ってて」
そういうと、拓篤くんは部屋を出ていく。
何処へ行ったんだろうと、彼が出ていったリビングのドアを見詰めていると
「平野さん」と背後で声を掛けられる。
振り向くと、真剣な顔を浮かべた神谷さんの姿があった。
「護は、大切に想う人に隠し事をする奴じゃない。それは、私が保証する。あいつから話してくるまで、待っていて欲しいんだ。護に、少し時間を与えてやって欲しい」
短い間だとはいえ、ココで一緒に暮らした仲だ。
護くんの性格は、私よりもずっと理解しているからこそ言える言葉。

