クローバー♧ハート - 愛する者のために -


そんなに長居するつもりは無い。

長居すれば、余計なことまで口にだしてしまいそうだから。



「親父は?お代わりいる?」



拓篤くんの声に、神谷さんは「あぁ、そうだな」と言うとカップの中身を飲み干した。

この前来た時にも感じたけれど、家事全般は拓篤くんが担っているのか、手慣れてる気がする。

それに神谷さんも、長年そうしてきたかのように当たり前に振る舞っている。

この家には“母親”がいないの?



「平野さんは、感情が顔に出やすいって言われたことありませんか?」

「え?」



思いもよらない言葉に、目を瞬かせ神谷さんを見た。

そんな彼は、クスクスと喉を鳴らして笑う。



「失礼。今、拓篤を不思議そうに見てたから。もしかして、この家に母親がいないのかとか考えていたのかなと思ってね」

「あ……スミマセン」



自分の考えが筒抜けだったことに、驚いたと同時に恥ずかしくなった。