本当は、もう少し早くココに来なければいけなかったんだけど
護くんの事が頭の中を締めていて、今の今まで思い出せなかった。
「そうか、それは良かった。自分の思い通りに結果が出ることなんて、なかなかありませんからね」
そう言うと神谷さんは目を伏せ、テーブルに置かれていたカップを手に取り
黒い液体を喉に流し込んだ。
きっと今まで神谷さんが担当してきた人たちでも、私と同じような人は沢山いたはず。
だけど望んだ結果が出るとは限らない。
苦い水を飲んだことも、沢山あるだろう。
それを思えば、私は幸運だったのかもしれない。
「スミマセン。今、茶葉切らしててコーヒーしかないけど大丈夫ですか?」
キッチンから顔だけを出して、声を掛けてくれる拓篤くん。
本当に気が利く子だなぁ。
「ありがとう拓篤くん。でも、お構いなく」

