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「来ちゃった――」
足を止めたのは、いつかきた「神谷」と書かれた表札の前。
居るかどうかも分からないのに、どうしよう。
詮索するつもりはない……んだけど、気になる。
それに、あれから護くんご両親のこと何も言ってこない。
もう夏が過ぎようとしてるのに――。
あー、でも本人がいないところで聞き出すっていうのも違う気が。
神谷さんの門の前で行ったり来たり、呼び出しベルを押そうとして止めたり
奮闘すること数十分。
何やってるんだ、私は……帰ろう。うん、それがいい。
踵を返し、一歩足を踏み出した。
「あれ、平野さん?平野陽香さんですよね?」
どうして、呼び止めちゃうかな。今帰ろうと決意したばかりなのに。
彼の言葉に、こんなにも簡単にグラついてしまう自分が悔しい。

