クローバー♧ハート - 愛する者のために -


またしても言い終えない内に、私の声はかき消された。

それは彼の声ではなく、彼の温かな胸板に押し付けられることによって――。



「俺、もの凄く嬉しいです。ここで叫びたいくらいに」



強く抱きしめる腕から、彼の嬉しさが感じ取れる。

周りの人が見ているかもしれないから、本当は恥ずかしいけれど

もう少しこのまま、彼の匂いと温かさに包まれて居たいと思ってしまうのは

恋の病にかかってしまった所為?



「ふふっ、それは注目の的になるから止めて欲しいかな」



耳に当てた胸から、早鐘のように打ち付ける彼の心臓の音が聞こえる。

私には、この音と腕の強さだけで十分。



「じゃ、キスは?」

「それもダメ。もうすぐ、悠が帰ってくるから」



嘘。本当は私だってしたい。

でも、悠にはまだ刺激が強すぎる。

だから、もうすぐ帰ってくるであろう彼には見せたくない。