車を降りると、一度悠の体を軽く跳ね上げ抱える体制を安定させた。
そんな私を見詰めながら、護くんは何か言いたげだけれど口を噤んでいる。
私は立ち尽くす彼をその場に置いて、悠を抱きかかえてアパートの階段を上がっていく。
予定より早く帰りついたから、夕方にもまだ早い。
このまま、別れていいの?
送ってもらったし「ご飯一緒に」とか「お茶でも」とか言うべき?
早く悠を布団に寝かせてあげたいという思いとは裏腹に
護くんと離れたくないと、後ろ髪を引かれる思いが交錯する。
「あ、あの――」
階段を半分上がり、踊り場まで来たとき思い切って声を掛けた。
「はい?」
車に乗り込もうと、運転席のドアを開けていた護くんが動きを止めて見上げた。
えっと……何を言おう。呼び止めたものの、考えてなかった。
「えっと、そうだ……水族館」
「水族館?」

