バカだ、私。
彼を少し困らせたいと言う悪戯心と、自分の本当の気持ちを悟られたのが
恥ずかしいという思いがせめぎ合い、その結果こんな言い方になってしまった。
中学生でもあるまいし、30にもなって何をしてるんだか。
自分に呆れてしまう。
「そうですよね。変なこと言ってスミマセン」
あはは、と軽い笑い声をあげて視線を前に向ける。
それから視線は合うことなく、他愛のない話をして家路についた。
「あの、本当に一人で大丈夫ですか?俺、部屋まで悠を運びますよ」
寝付いた悠を抱きかかえるなんて、いつものこと。
私にとっては何でもないことなんだけど、優しい彼はそう言ってくれる。
後部座席から、寝付いて重い悠の体を抱きかかえながら降りていく。
そんな私をドアを開けながら心配そうに外で待ちながら、いつでも手を貸せるように右手が差し出されている。
「平気、平気。それより、護くんも疲れたでしょ?帰ってゆっくり休んで」
「いや……俺は、別に」

