「由依さん。あなたは、勘違いをしているわ」
冷静に……頭に血が上っちゃいけない。
護くんのお蔭で、落ち着かせてくれた気持ちを乱しちゃいけない。
あくまでも、これは話し合い。喧嘩をするためにココに来たわけじゃない。
そう、自分に言い聞かせた。
「なにが勘違いよ。今だってコソコソと話しちゃって、何を企んでるつもり?」
腕を組んで仁王立ちの由依さん。
あなたと違って、何も企んでなんかいないわよ。ただ真実を知って欲しいだけ。
そして、あなたの気持ちを教えて欲しいのよ。
「裕貴が、どうして私の名前を呼んでいたのかは分からない。だけど私はこの五年間、一度も裕貴に連絡したことなんて無いわ。ましてや、誑かすなんてしてない」
彼女の目を逸らすことなくジッと見つめて、落ち着いたトーンで話をした。
由依さんの心に届くように。私の言葉に嘘偽りがない事を、信じて欲しいから。
「嘘いわないで!」
「嘘じゃない。三ヶ月前、裕貴から連絡があったの……最初は、無視してた。だけど六月に入ったころ私の勤務先に来たの。悠を引き取りたいって……あなたが、裕貴に渡した興信所の報告書を持ってね。あなたが、私の居場所を裕貴に教えたんでしょ?」

