「案外、早く見付けたわね。つまんない」
後ろで心底残念そうな声が聞えた。
その声に振り返ると、腕組みをした一人の女性が立っていた。
軽くウェーブが掛かった胸辺りまである黒髪が、夏の風に吹かれ軽やかに揺れる。
彼女は髪を掻き上げ、右側だけ口角を上げて意地悪く微笑んだ。
「由依さん、どうして……」
「どうしてって、あなたを付けただけよ」
悪びれることなく、私たちにゆっくりと近づいてくる。
さっき焦りながら走ってきた姿とは、丸きり違う。
なんかこう……黒い影が彼女の後ろに見えるような――。
怖い。彼女が何を考えているのか分からない。
「あ、心配させてスミマセンでした。悠なら、見つかりましたから」
もし彼女が心配して、私についてきたなら安堵の言葉が出るだろう。
でも何か企んでるとしたら、そう言わないはずだ。
「心配なんてしてないわ。裕貴がキャストに知らせていたし、時期に見つかると思っていたから」

