クローバー♧ハート - 愛する者のために -


「案外、早く見付けたわね。つまんない」



後ろで心底残念そうな声が聞えた。

その声に振り返ると、腕組みをした一人の女性が立っていた。

軽くウェーブが掛かった胸辺りまである黒髪が、夏の風に吹かれ軽やかに揺れる。

彼女は髪を掻き上げ、右側だけ口角を上げて意地悪く微笑んだ。



「由依さん、どうして……」

「どうしてって、あなたを付けただけよ」



悪びれることなく、私たちにゆっくりと近づいてくる。

さっき焦りながら走ってきた姿とは、丸きり違う。

なんかこう……黒い影が彼女の後ろに見えるような――。

怖い。彼女が何を考えているのか分からない。



「あ、心配させてスミマセンでした。悠なら、見つかりましたから」



もし彼女が心配して、私についてきたなら安堵の言葉が出るだろう。

でも何か企んでるとしたら、そう言わないはずだ。



「心配なんてしてないわ。裕貴がキャストに知らせていたし、時期に見つかると思っていたから」