「気を付けて帰って下さいね」



いつもと変わらず、三日月のように目を細めて笑顔を向けてくれる。

ほんの少し、その笑顔に淋しげな表情が混じっていた。



「はい」

「また明日」



手を振って園を出た。

右手にはしっかりと、悠の手を握って。

悠と一緒に買い物に行って、晩御飯を食べて、いつもの生活リズムに戻ると

やっと少し落ち着けた。


大丈夫、もう大丈夫――。

電話番号も拒否したし、もう掛かってくることは無い。

それに、会うことも無いはずだ。

そう思っていた。


だけど、そんな考えは甘かった。

誰にも教えていない連絡先。それをどうやって彼が知ったのか。

それを考えれば、次に彼が起こす行動なんて気が付いたはずなのに

私は分かっていなかった――。