「よーし。じゃ、材料買いに行こうか」
立ち上がると、後ろに控えていた一ノ瀬センセが近づいてきた。
「はるさん?大丈夫ですか」
困惑気味の一ノ瀬センセ。
そんなに可笑しな行動だっただろうか。
あまりに焦っていて、自分でも余裕が無かったからよく覚えていない。
それでも彼を、私の事情に巻き込むことは出来ない。
「あ、一ノ瀬センセ。いつもありがとうございます。どうかしましたか?」
あえて素知らぬふりを通すことにした。
「どうかしたかって……」
「イチにぃ」
どういうべきか迷っているという感じの一ノ瀬センセだったけれど
悠が彼の裾を引っ張り、何やら耳打ちをすると「わかった」と
納得したように頷いた。