一度だけ見たことがある、彼女。

それは裕貴の婚約発表の日。

彼女は裕貴と一緒に櫻井総合病院に来ていた。


六年前。彼の隣で幸せそうな笑顔を浮かべた、少し幼さを残した可愛い女性が

今では、大人の色気を漂わせ、まるでモデルのようになっている。


月日が経てば女は変わるとは言うけれど……。

身なりから服装まで、私とはまるで違う。

思わず、自分の今日の服装を確認した。


動きやすさを重視した、ブルージーンズにグレーのプルオーバーといったラフな格好。

色だって汚れが目立ちにくいものに、どうしたってなってしまう。

白なんて白衣以外、しばらく着てない。



「陽香、悪い。コイツ、どうしても行くって聞かなくて」

「初めまして、陽香さん。いつも主人がお世話になっています」



可愛らしい笑顔を浮かべ、裕貴の隣に立つ。

いやいや、お世話した覚えないし……それに、なんだか彼女の笑顔少し怖い。