「じゃ、俺は自分の部屋に行ってるから。何かあったら呼んで」
そういうと、拓篤くんはリビングから出ていった。
きっと私たちに気を遣って、席を外してくれたんだろう。
それを見届けて、私はゆっくりと裕貴とのことを話し始めた。
神谷さんは時折りメモを取りながら、相槌を打ちつつ真剣に聞いてくれる。
その間、悠は私の手にそっと小さな手を重ねて待っていた。
そうして、一時間後――。
「大体の状況は分かりました。一点、確認したいのですが……彼は、悠くんを認知していますか?」
認知……いや、裕貴は私が悠をも身籠ったことも、産んだことも知らなかった。
私は、一切彼には教えていないのだから出来るはずがない。
「いいえ」
「ならば、シングルマザーと言えど親権は簡単には奪えません。安心してください」
神谷さんの言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。
良かった。私はまだ、悠と親子でいられる。

