『おう、遅かったな。入れよ』
その声と同時に、カチャッと門の鍵が開く音がした。
その音が、まるで私たちの運命の扉を開いた音のように聞こえて
思わず、ゴクリと生唾を飲む。
するとそんな私に気が付いたのか、護くんはフッと微笑んで私の手を掴み
「大丈夫。俺がついてる」と私だけに聞こえるように囁いた。
「他人の家の前で、イチャつかないでくれる?」
いつの間にか奥の玄関ドアが開いて、黒縁メガネを掛けた護くんと同じくらいの
背の高い男性が私たちを呆れ気味に見つめていた。
イチャつくなんて……そんなこと――。
息子のいる前でする訳ないじゃない、と悠の方に視線をやると
何故か、ニコッと微笑えみ口パクで「良かったね」と言った。
良かったね?……何が、良かったんだろう。それとも私の読み間違い?
「た~くまっ。なに、嫉妬してんの?」
拓篤と呼んだ黒縁メガネの男性に、護くんは飛びつくように抱きつく。
それを驚きもせず「阿保か。妬くわけないだろ」と軽くあしらって、苦笑を浮かべる。

