ギュッと手を握り締めて、前を向く。
新築のような、真新しい立派な二階建ての一軒家。
目の前には重厚な黒い鉄製の門があり、安易に近寄れない雰囲気がある。
いや、単に私がそう感じるだけかもしれない。
一つ息を吐いて、インターフォンに手を伸ばす。
けれど、手が震えて上手くボタンが押せない。
もう、しっかりしなさい!陽香!!ここで根性出さないで、どこで出すの!!
自分に喝を入れて、もう一度ボタンに手を伸ばした。
カチッと指が触れた瞬間、ピンポーンと軽やかな音が響く。
『はい』
思ったより、若い男性の声。
護くんの友人っていう子だろうか。
「あ、あのっ――」
「拓篤(たくま)。俺、護だ」
言葉が詰まって出せない私に変わって、横から護くんがそう言ってくれた。

