クローバー♧ハート - 愛する者のために -


ギュッと手を握り締めて、前を向く。

新築のような、真新しい立派な二階建ての一軒家。

目の前には重厚な黒い鉄製の門があり、安易に近寄れない雰囲気がある。

いや、単に私がそう感じるだけかもしれない。


一つ息を吐いて、インターフォンに手を伸ばす。

けれど、手が震えて上手くボタンが押せない。

もう、しっかりしなさい!陽香!!ここで根性出さないで、どこで出すの!!

自分に喝を入れて、もう一度ボタンに手を伸ばした。

カチッと指が触れた瞬間、ピンポーンと軽やかな音が響く。



『はい』



思ったより、若い男性の声。

護くんの友人っていう子だろうか。



「あ、あのっ――」

「拓篤(たくま)。俺、護だ」



言葉が詰まって出せない私に変わって、横から護くんがそう言ってくれた。