父親――。
最近の悠を見ていると、父親の存在が気になり始めてはいる。
本当は、同性の親が欲しいのかもしれないと。
悠に父親は死んだと、嘘をつき続けるのも辛い。
だけど、それでも私は――。
ギュッと膝上の拳を握り顔を上げた瞬間、左肩にほんのり体温の高い手が降りてきた。
「悠の父親には、俺がなります。だから、引き渡すつもりはありません」
この声、嘘――なんで、ここに居るの?
「ぃち……護、くん」
一ノ瀬センセと言ってしまいそうだったのを慌てて言い直し、左側を見上げる。
すると走って来たのか、額に少し汗を浮かべた護くんの顔がそこにあった。
「ただ、悠にはあなたのことを話します。その上で、悠が会いたいと言えば会わせます。彼が望まないことを、俺たちはしません」

