悠を守る為なら、手放さなくて済むなら、私は鬼にも邪にでもなる。
我が子のためなら、どこまでも強くなれるのが母親なんだから。
「忘れもしない。あなたが、病院内で正式に婚約発表をした日よ。突然、院長室に呼び出されて行ったら、あなたのお父様である孝宏さんがいたの。そして、ハッキリと言われたわ。産むことは許さない、堕ろせとね」
私の話に言葉を詰まらせる、裕貴。
始めて聞く真実に、目を見開いたまま口元を右手で隠す。
きっと彼は今まで誰にも聞かされていない。あの日のことを――。
私はあの日、自分の事をどんなに惨めに思ったことか。
裕貴を好きになるんじゃなかったって、何度も自分を責めた。
「だから私は悠を守るために、あの病院から去ったのよ。悠を殺されると思ったから。あなたに裏切られただけじゃないわ」
動揺する彼の目を見据えて、低く抑揚を抑えて言った。
これで分かってくれるはず。私が悠を手離さないことを。
自分たちの浅はかさを――。

