「…ひ、姫宮(ひめみや)」
一斗が苦しそうな声で、私の名字を呼んだ。
「…大丈夫?」
少し振り返る。
「俺と三斗は大丈夫だ」
「で、でも一斗が!」
「落ち着いて三斗、一斗がどうしたの?」
すると、腹を押さえてうずくまっていた一斗が、ヘラっと笑いながら私にいった。
「た、大したことねえよ。顔と腹に一発ずつ殴られただけだ」
「顔と腹ね」
再び、前を向く。
「――あんた、覚悟して」
「ああ!?」
相手が拳を引くのに力を入れたのを見計らって、私は手に込めていた力をパッと抜いた。
「うお!」
相手が転けそうになったところで、足を引っ掻ける。
「ぐっ」
転けたところで馬乗りになり、顔に一発お見舞いしてやる。
「ウッ」
無理矢理立たせると、今度は腹に思いっきり蹴りを入れる。
「カハッ!」
喧嘩は作業だ。
予定どうり、手順どうりにやれば、女にだって男を殺れる。
「レン!」
うずくまっているレンに、青い髪の男が駆け寄る。
…あれ、この人見たことある…ような?
「ゴホッ、ゲホッ」
「大丈夫?嘘だろ…レンが女相手に…」
男が私を見る。
右目だけでも、ハッキリと顔を確認できた。
見開かれたタレ目に、チャラチャラしたピアスを付けた耳。
少しきつめの香水の香り。
THE☆女たらしな雰囲気の男。
「はぁ、…もう嘘でしょ?」
思わず呟く。
この人、あのめんどくさそうな集団の一人じゃん!
『アオイ』じゃん!


