「…ちょっと、何でついてくるのよ?」
私は後ろを見た。
そう、信じられないことに銀狼がついてきていたのだ。
「お前が俺の話を聞かずに、さっさと行くからだろ」
話?
そんなのあった?
…あ、なんか最初話しかけてきてた、たぶん。
「…じゃあ、話って何?」
「言わなくても、もうわかってんだろ?」
そう、わかってる。
会ったときから直感していた。
きっと、あの猫目の美女みたいに勧誘しに来たんだ。
でもまさか…
「お仲間さんを一人も連れずに、正面から来るなんて思わなかった」
「お前が言ったんだろ、昨日」
「言ったけど…」
一対一で面と向かって話すのは、慣れてない。
ひとつ目の踊り場で立ち止まっていた私に、銀狼が近づいてきた。
ヤバい、このままじゃこいつの雰囲気に飲まれる。
なんとかして勧誘を止めさせないと。
「……私は、やめといた方がいいよ?」
体ごと銀狼からそらして言う。
「私は、たぶんあんたたちが思ってるほどの人間じゃない。
あんたも知ってるでしょ?
天下の姫宮理子の噂」
私には、四つの顔がある。
一つは『金狼』。
そして、『姫宮理子』。
「『姫宮理子』はヤリマンだ。
金次第で好きなだけ抱かせてくれる。
誰でも相手にする、金さえ出せば。
この噂、知らないわけないよね?」
最初聞いたとき、そりゃぁ驚いた。
でも、すぐにどうでもよくなった。
他人からの評価なんて、自分を飾る装飾品みたいなもの。
それならいくらでもかわりはある。
今さら自分を飾って、見かけだけきれいに見せようとも思わなかったし。
「いくら『金狼』が欲しいからって、自分を汚すことないんじゃない?
それに、周りが許さないでしょ。
こんな尻軽女、認めてくれるはずないじゃない」
声が少し震えたのは、無意識だ。
うつ向いてたのも、無意識。
「まず、金狼だって認めないかもね。
だってこんなの、みんなの望む金狼じゃな――」
ドンッッ


