「おーい」

「……」

「おーい」

「うーん…」

「こりゃだめだな」

「……」








チュンチュン


「んー…」


ゆっくり目を開けると、アイツの顔がどアップだった。


「うわっ!え!え?」


びっくりして思わず起きる。
隣のアイツはまだぐっすり寝てて、あまりにも気持ちよさそうに寝るからムカついておでこをたたいてやった。


パシッ

「いって…あ?」

アイツは不機嫌そうに目を覚ますと
あたしを睨んだ。

「お前なあ…恩人のおでこたたくとはいい度胸だな」

「あ?あんたのこと恩人だなんて思ったことないよーだ」

「は?誰が昨日の夜ベロベロに酔った女をここまで運んでやったと思ってんだよ」

「それはさんきゅさんきゅ。で、ここどこ?」

「あ?来たことなかったっけ?実家」

「はあ?早く言ってよ‼︎親とかいんでしょ?やばいやばい」

あたしは急いで起き上がって、昨日の夜アイツが着替えさせてくれたジャージを脱ごうとした。


「あ、大丈夫今親いねーよ」

「なんで?」

「なんか今、夏休みだろ?仕事の夏休み取れたから夫婦揃って2人で旅行だと」

「ほー、仲良しだねえ〜」

「んーまあな。じゃあ俺朝ごはん準備してくるわ」

「おーう」



恋人同士の会話に聞こえるでしょ?


普通はそうだけど、あたしたちは違う。


あたしは、長瀬 葉月 (ながせ はづき)

明王大学1年の18歳。

身長は160くらいで髪はロングの茶髪。

体つきはいたって普通。

バイト先は夏は暇なときはおじいちゃんの海の家手伝って、それ以外のいつもの季節はカフェ。


顔も別にブスではないと思うけど、
恋愛はいつも上手くいかない。


いつも、浮気されて泣いて別れる。

はあ〜…
上手くいかないんだよね〜…


そして、あたしの隣に寝てた男。

そいつの名前は
渡辺 泉 (わたなべ いずみ)

明王大学1年の18歳。

泉とは高校の時に出逢って、仲良くなって、高校のときは泉は野球部で、遊ぶひまなかったけど、大学生にもなるとOFFの日はこうしていつも遊んでる。


大抵、カラオケか飲みか大学生から一人暮らしの泉の家で泣ける映画見るかそんくらいなんだけどね(笑)

飲みって言っても、あたしが失恋したときとか嫌なことがあったときにあたしが飲むのを付き合ってくれる。
泉は野球やってるからね。


いつも2人でいるけど、あたしたちは恋愛とかじゃなくて親友?家族?みたいな存在。

普通に恋愛相談もするし、浮気されて別れるととりあえず泉の家にいくか、電話して迎えに来てもらう。



泉はかっこいいと思う。普通に。

185も身長あるし、高校のときは坊主だったから童顔に見えたけど、髪も伸びて前よりもかっこよくなったし、筋肉質でおまえに野球部のピッチャー。
高校時代は甲子園のベスト4に入ったくらいだ。

そんな男を女子がほっとくはずもなく…
昼休みはお弁当食べる時間あんのかなってくらい次から次へと女子に呼ばれてた。

それでも嫌な顔せず、行って申し訳なさそうに帰ってくる。


あたしはギャルだったから泉と仲良くしてるのが自分でも不思議だったけど、席が前後になってから妙に居心地よくて。


いつの間にか付き合ってるなんて噂流れた時も、泉は本当か聞かれても否定もせずにただ笑顔で応じてた。



きっと彼女がいるってなったら告白される回数が少なくなるとでも思ってあたしを使ったんだろう。



男女の友情なんてないとか言うけど
あたしはあると思う。

だってこうして、隣で寝ててもなにも起こらないんだもん。

平気で、あたしを着替えさせてくれるんだもん(笑)