「・・・そして、泣きたくなる」




体操座りをした膝に体をうずめながら鬼羅さんは呟いた。
なんだか、切なそうで悲しそう。

もしかして、お姫様の事を想ってる?


匂いが、似てるのかしら。
鬼って、嗅覚いいのかな。




「好きだったんですね、お姫様のこと」

「・・・お前には、関係のないことだ」

「なによ。いい匂いだって言ったくせに」




私がからかうようにそう言うと、鬼羅さんは私を睨みつけるようにして見た。
私から魚を奪うと、大口をあけて頬張った。




「今でも、好きなんですか?お姫様のこと」

「・・・ああ。愛してる」




愛してる・・・。
そんなことをサラリと言えるような人なんだ。
意外・・・。




「これからも、ずっとだ」




ああ、素直にいいなぁと思う。
そんな風に思ってもらえる人は。