ガラッ。

静かに図書室の扉を開け、図書室内を見回す。


いた…。

1人本を読んでいるであろう西野くんの背中に そっと近づく。


「西野くん。」


シーン…。返答はない。


……。…あれ?

そっと顔をのぞき込むと、すやすやと静かな寝 息をたてて西野くんは眠っていた。


「寝てる…。」


ふーっと軽く息をついて、私は西野くんの隣に 腰掛けた。


よく座ったまま寝れるな…。


そんな事を思いながら西野くんの寝顔を見つめ た。


「ん…。」


ゆっくりと西野くんの瞼が開かれる。


その一つ一つの行動に、自分の胸が静かだけど 、大きく音をたてているのに気がついた。

レンズ越しに輝く瞳に、私は完全に見入ってい た。


「立花さん…。」


西野くんの声に、私はすぐに現実へと引き戻さ れる。


「話って…なに?」


いつもより低い声に冷や汗は止まらない。


「あの……。あれは聡美が勝手に…。」


じゃない。誤解を解かないと…。


…あれ?そもそも誤解してんの?

不思議と疑問が生まれ、私が1人首を傾げてい ると、


「俺は話しがあるんだけど。」


「え…?」


西野くんの思いがけない言葉に、開いた口を閉じるのを忘れていた。


「告白…。断った?」


少し眉を八の字にして、困ったように笑う西野くんを、私はただ見つめていた。


「…付き合ったの…?」


また無表情な顔に戻り、さっきと同じような低い声が私の耳に突き刺さる。


「…付き合ってない。断った。」


私がそう言うと、西野くんはきょとんとしていた。


「?西野くん?」


不思議に思い彼の名前を呼んでみる。


「あ、ああ。そうか。」


明らかに動揺しているのが見え見えだ。


「それだけ?」


緊張して損した。
なんてことは言えずに、一応心にしまい込んでおいた。


「ごめん…。なんか…付き合ってほしくないし…告白されてるってきいて、嫌な想像しかできなくて…。気付いたらイライラしてて…」


深く溜め息をついて、西野くんは机に突っ伏した。


西野くん。

そうゆうのを私に言っていいのか?


てゆうか、これがヤキモチというものですか…?


なんだかドキドキが止まらなくて、私も西野くんと同じように机に突っ伏してみた。


ヤキモチは心臓に悪いな、なんて心の中で呟きながら、いまだに机とにらめっこしている西野くんを横目で見つめた。


彼を見つめている自分の口元が、少しだけど確実に緩んでいたことを、私はまだ気がついていない。