月が2人を照らしてる




同じクラスで名前しか知らなかった彼と話したのは本当に突然だった。



『立花さん。』


聞き慣れない声が私の名前を呼んでいた。

私は声のした方へと目を向けたのだ。


『西野…くん?』


高校に入学して間もない私達は、名前を覚えるのも精一杯で、正直あまり友達もいない。

そんな中で彼、西野隼人は私の名前を呼んだのだ。


『今日の放課後図書室に来て。』


は?

声にならなかった声は彼に届くはずもなく、彼はただ一言そう言っただけで、真顔でどこかに行ってしまった。


おい。
言い逃げか?

てかなに…?決闘…?

いやいや…。


まさか……


『告白?』


私の言葉(心の声)を遮るように後ろから声が聞こえた。


『真白も隅に置けないわね。』


『早坂聡美…。』


『フルネームで呼ぶのってどうかと思うけど?』


『ごめんなさい…。』


どうかと思うけどって言われても…。


こないだ友達になったばかりなのに、人の名前を呼び捨てしてるあなたの方がどうかと思うけど…。


『それはなに?心の声?それとも私に喧嘩売ってるの?』


『あ…もれてたのか…。』


『まぁいいけど。西野くんだっけ?あれ告白じゃないの?』


早坂聡美…ではなく、聡美は私の前の席に着くと、私の顔を覗き込み問いかけてきた。


『知らないよ…。』


とは言ったものの、正直自惚れている。

他に何があると言うのだろうか…。


『やっぱり決闘…?』


首を傾げて呟く私に、聡美が呆れて溜め息をついていたのは無視しておこう。