「帰って来ちゃって良かったかな?」
月が輝く空を見つめながら、隣を歩く西野くんに問いかける。
「大丈夫でしょ。一応メールは入れといたし。」
「そっか。」
遊園地で繋がれていた手はもう離されていて、寂しいと思う自分がいるのに、私は気付かないふりをした。
「立花さん。」
「ん?」
「月が…綺麗ですね…。」
高鳴る胸は、きっと答えを導き出している。
わかっている。
わかっているんだ。
この気持ちがなんなのか。
今伝えなければ、きっと後悔してしまう事も。
それでも私は……
「そうだね…。」
月を見つめながら、私は彼の顔を見ることは出来なかった。
臆病だから、彼とのこの関係が崩れるのを激しく恐れた。
「やっぱりずるい…。」
隣からふとそんな声が聞こえたけど、気付かないふりをして彼に話しかけた。
「明日、本買うのに付き合ってよ。」
やっぱり…、私はずるいのかな…?
「はいはい…。」
少し呆れながらも、彼は優しく返事をしてくれた。
私の気持ちを知ってか知らずか、そんな事は分からないけど、月は変わらず私達を照らしていた。

