月が2人を照らしてる




「聡美。」


「なに?」


「あれ見てみ?」


「知ってるわよ…。」


待ち合わせ場所に着いてみればこの様。

香川くんと西野くんは女3人に囲まれている。


そう。いわゆる逆ナンというやつだ。

まぁ…、西野くんはガン無視していて、一生懸命断っているのは香川くんだけど。


「どうすんのさと…」

み…。っていないし。

聡美は1人、ナンパされてる香川くんに近付く。


「真白!行くわよ。」


いかにもキレてますオーラを漂わせながら、大きな声で私に言う。

わお…。キレていらっしゃる…。


「はーい。」


適当に返事をして聡美について行く。


「斗真くん!」


ニッコニコしながら近付く聡美。

そして今気付きましたよ、と言わんばかりに彼女は女達を1人1人見つめて首を傾げた。


「あれ?お友達?」


お友達ってあなた…。キャラ変わってない?
てゆうかその笑みが怖いっす…。


「なんだ彼女持ちか。こっちにしよ!」


そう言って女達は西野くんの腕をとる。

その瞬間聡美におもいきり蹴飛ばされ、私は一歩前に出た。


なぜ私が…。

心の中で文句を言い、後で聡美を恨んでやろうと誓って深く息を吸った。


「……隼人は私とでしょ?」


西野くんの手を取り、柄にもなく可愛い声を出す。

ヤバい。穴があったら入りたい。


「なーんだ。行こ。」


女達はそう言うと呆気なく行ってしまった。


「真白やるー。」


ちょっとムカッときた。ちょっとね。

そんな私の心情なんか無視して香川くんは聡美の手を握った。


「聡美ありがとう。」


「どういたしまして…。」


少し顔を赤らめ見つめ合う2人。


あ…嬉しそう。

じゃなくて、ここ公共の場所。状況考えていただきたい。


そんな事を思っていて、私はふと気がつく。


「あ…。」


いまだに掴んでいた西野くんの手をそっと離す。


「ごめんなさい…。」


なんだかさっきの自分の行動が恥ずかしくて俯いてしまった。


「あ、ありがとう…。」


上から西野くんの優しい声が降ってきて、私は顔を上げた。


「…っ…。」


そこには、顔を赤らめそっぽを向いている西野くんがいて。


こんな顔を見られるなら、ナンパされてる西野くんを助けるのも悪くないかな、なんて思ったりして……。