「うわぁぁぁぁあ……」

響き渡る絶叫、伝染する緊張感。

誰もが、その叫びの元に目を向けるとともに、瞳に驚愕の色を映すのを止められない。

美しすぎる。

男も女も、一目見た瞬間から彼に目を奪われた。

勿論、妾を含めてだ。

しっとり…されどさらさらとした肩より短い髪。


長い睫毛に囲まれたら大きくて切れ長の瞳。


男だと言うのに、白くきめ細かい肌についた唇は、むさぼりたくなるほど色っぽい。


その唇を絶妙な角度に上げ笑みを作ればたちまちその人その人の虜だ。


『おや?』


その人は俺を見ながら言う。


『まだ、自我を保てるのか……。それにしては他のやつよりも俺を貪り食いたいという欲が強い。』


面白い、そう言いながら妾の顎を久尾と上げるその人。


『うむ。顔も綺麗で、俺好みだ。女、俺についてこないか?』

断ることなどできるはずがない。

『そうか、俺の名は聖夜。お主の名は?』

『紫苑……』


聖なる夜……この夜にぴったりな名前だ。


『さぁ、契約をしようか。』


突然、唇が己の物でないもので覆われる。


それと同時に口内を犯す熱いナニカ。

『よし、契約成立だ。右手首を見てみろ。』

 
視線をずらして見えたのは、手首を飛ぶコウモリ。

『それが、契約の証だ。それは一生消えないし、俺が死ぬまで紫苑が死ぬこともできぬ。あぁ、契約内容は、ずっと俺のそばにいることと、毎日同じやり方で血液をもらうことだから。』

………妾は一生この人に振り回されるのでしょう……。