俺は子供の頃から、非現実的な生き物の実在を信じてはいなかった。幽霊、怪物、神、どれも信じていなかった。

9才の時、母親が死んだ。

治安の悪い場所で暮らしていた為、ヤクザ、暴力団、その類の族がウヨウヨト居た。

母は、そのごたごたに巻き込まれ死んだ。

俺の目の前で。

父親は、その時出張していた為すぐに対応する事が出来なかった。

俺の暴走に。

人を殺しかけた。

その時初めて、俺や父親が人間でない事を知った。

半分人間半分狼。

狼男だ。


10才になった時、父方の祖父の家に行き、狼男の事を詳しく学んだ。

俺達の家系は代々狼男の血が流れていて、伝説の通り満月には狼の姿になる。銀に触れると肌が火傷する。心臓が好物である。

代々人間と結ばれてきた俺達の一族は、少しずつ能力は弱まり、狼になった時に意識を保てる者も出てきた。

そして、俺達の種族は掟がある。
人間には手を出してはならない。

掟を破った者は、罰を受ける。死刑だ。

人を襲う衝動に駆られる期間中に耐えることが出来ず、人を襲ってしまう者は少なからず居るそうだ。

4年間、訓練をした。

学業と両立しながらの訓練は辛かった。
「苦しい。辞めたい。」
何度も思った。

自分がバケモノとしてこの世に産まれた事を恨んだ。

そして5年たった。

実践訓練として、都立高校に入学した。
この訓練の最大の難関は、人間に完全に紛れると言うこと。

一歩間違えれば、死刑になる。

そんなギリギリの環境で俺は……