おれたちは河川敷を、無言でとぼとぼあるいた。通学路からはずれているが、正直人目も少ないし俺にとっては好都合だった。

安子と何かを話そうかともかんがえた。しかし、なにも頭のなかに浮かばなかった。おれと安子の接点はまったくといっていいほどない。そんなおれと安子で共通の話題を見つけられるわけがなかった。

突然、安子が立ち止まったかと思うと土手をおりて橋桁の方へと向かっていった。おれはその行動の機敏さに驚きつつも安子を追いかけた。

安子がうずくまってなにかをしていた。

ねこだ…
猫にえさをあげているんだ…

安子はいえからもってきたのであろうベーコンやハムを猫にあげていた。ネコは首輪をしていたが毛並みが荒れていた。おそらく捨てられた飼い猫なのだろう。おなかがすいてるのか安子があげたベーコンをむしゃむしゃと食べていた。

猫は安子になついているのかときどき安子に体をすりよせていた。おれはその様子をすこし、離れた場所で見ていた。
「にゃあ」
突如、猫がおれの方を見上げおれへと体をすり寄せてきた。どうやら気に入られてしまったらしい。おれは猫の頭をやさしくなでた。なぜか猫はほんのりあたたかった。