涙想い

けんちゃんは顔は別にカッコいいってわけではないけど、とても優しくて面白い。
この前 いくちゃんと一緒に廊下でけんちゃんとすれ違った時に紹介したんだっけ…。
「前に沙奈に紹介してもらってから時々廊下で会うんだ。それで話しかけてくれたりしてさ、どんどん気になっちゃってきて…」
やっぱりそうだったんだ。
自分の事を話してよほど恥ずかしかったのか最後の方がだんだん小さくなってた。
恋する乙女って感じでなんか良いな。
「けんちゃんとメールとかちゃんとしてる？」
心配がちな声で聞くと、
「ほとんど私からだけどね…ちゃんとしてるよ」
「そっか。応援してるよ！いくちゃんなら行けるよ」
キャーキャー言いながら内心ホッとした。
「うん、ありがとね。沙奈大好きっ」
もうほんと可愛い癒される。
「わたしも」
照れながら言って昼食の時間も終わり教室に戻った。

放課後になり私は家に帰宅した。
お母さんは仕事で夜帰りなので夕方にはもちろんいない。
お兄ちゃんは遠い大学なので寮で生活しているので休みや特別な日にしか帰ってくる事はない。
「ひとりとか私 寂しい奴だなぁ…」
ひとりで言いながら心がちょっと傷んだ。
明日は休みだからお兄ちゃんが帰ってくる。
お母さん相当喜ぶんだろうな。
夜になるまでテレビを見たりして時間を潰した。

「ただいま〜」
パタンと玄関からドアが閉まる音と同時に仕事から帰ってきたお母さんの声が聞こえた。
待ち遠しくて、ついに帰ってきたか！と玄関まで走る。
「おかえり！仕事今日もお疲れ様。それよりお腹減った〜」
仕事で疲れているお母さんには申し訳ないけど本当にお腹が空きすぎて死にそうだ。
「ごめんね、遅くなって。今作るから」
「うん、いつもありがとね」
そう言ってお母さんに日々の感謝の気持ちを伝えた。
お母さんは私にニコっと笑顔を向けてくれた。
こんなに良いお母さんの所に生まれて幸せだ。