「いえいえ。
……あ、あれって…。」



遥香が前方をみて、なにかつぶやく。



「ん?なになに?」



「え!?いや、なんでもない…。」



慌てた様子であたしの前に立つ。
なにか隠しているようだ。



「何なの…?」



あたしは遥香を避けて、前の方をキョロキョロと見回す。



「…あっ。」



「……仲﨑くんだ。」



しかも、女の人と一緒。



「わざわざ隠してくれようとしたんだね、遥香。
ありがとう。でも、大丈夫だよ。」



「…なにが大丈夫なのよ。」



あたしは無意識に涙を流していたようで、頬に伝う涙を手で拭ってくれる遥香。



「…だから、…だいじょーぶだってば。」



優しく抱きしめてくれる遥香に、あたしはそういった。



「…嘘つかなくていいから。」



「…うぅ。はるかぁー。」



あたしはその後、遥香に抱きしめられたまましばらく泣いた。

落ち着いてくると、大胆に道端で泣いていたことに気付き、恥ずかしさに顔を赤くした。



「…ごめん遥香。ありがとう。」



「いえいえ。
泣きたいときは泣いていいからね。」



「うん。」