胸ドキドキと言えば、小学校6年の夏休み前に小学校に映画の撮影隊が来た。
確か千羽鶴と言う映画だったと思う。佐々木貞子さんと言う被ばく少女を
主人公にした反戦映画だった。これを機に原爆の子の像の募金が始まり像が
建った。この像は自分たちが建てたんだという自負が今でもある。

その撮影のエキストラを選ぶときに2つのシーンがあった。一つは幟町中学校
での全学集会の場面。もう一つは彼女の母校幟町小学校での朝の登校の場面。
集会の方は全校あげて大はしゃぎ。ところが登校の場面には何度も緊張が走った。

午前中に校門脇にレールが敷かれ大型の撮影器具類がセットされ移動を繰り返す。
校門を入ったところで演技がありエキストラ数十人がその後方を登校するという
場面である。注意事項があった。

「絶対にカメラの方を見ないように、普通に歩いてください!」
何度か歩いてリハーサル終了。いよいよ本番だ。「本番!」の声とともに全体に
緊張が走る。「よーい、スタート!」カチンコが鳴った。

そして思わず緊張のあまり治はカメラの方をちらりと向いてしまったのだ。
しまったと思った瞬間、「はい。OK!」と大声がした。この時ほど冷や汗が
出て胸がどきどきしたことはなかった。杏子への初めての電話の後でこの時の
胸の動悸を思い出した。後日この映画を見に行って鮮やかな自分の顔に驚いた!