親父さんとの出会いも詳しく書いてあった。3冊目の冒頭は
6年生の春、あの付文事件のことで数ページにわたっていた。
思わず口を滑らせて顔中真っ赤になったこと。だけどとても
うれしかったこと、最初に言わなければ誰かに先に言われて
しまったらどうしようと思ったことなど。

付文はやはり宮本のでしゃばりだった。そのあとのホーム
ルームの時のことも、映画の撮影の時のことも、ずっと治の
事を気にしていたのだ。それにしてもなんと鈍感なことか、
男の子は皆そんなものだと思うのだが。

中学に入るとテニスのことばかりで赤い糸はなくなった。
数冊目の赤い糸は中三の夏、やはり包みが浦の海水浴の時だ。
今はテニスが一番好き、若林君はどんどん遠くへ行ってしまう
みたいと書いてあった。

次の赤い糸は何といっても教科書を借りた時だ。彼女も相当
びっくりしたみたいだ。突然の電話で顔がほてって何と答えたか
憶えていないほどだと書いてある。大急ぎで教科書を探したこと、
書き込みを消してきれいにしたこと、一期校は広大にして二期校
を京都学大に決めたことが躍るような字で書いてあった。

あの日の夕方母親と検診に行く日だったということを忘れていて
大慌てだったこと、私も京都へ行きたいかもとも書いてあった。
次の赤い糸は京都行きが決まった日だった。卒業したら幟町小学校の
先生になること、京都では家庭教師をして夏休みにもバイトをして
少しでも両親を助けなければとも。若林君に会えるかもとか。

すぐ次の赤い糸が京都での同窓会の日だ。すごく楽しみにしてたのに
若林君は元気がなかった、住所を知らせたのに手紙も電話も来ないとも。