「そう言えば兄妹みたいだったよなお前ら」
児玉が茶々を入れる。
「そんなことないよ」

治は一瞬ふさぎ込んだ。宮本がすかさず、
「ねえ、覚えてる?私が若林君に手紙渡したこと?」
わざとらしく明かるげに覗き込む。

「忘れたよそんなこと」
治は不機嫌に答えた。
「柴山さんのこと好きですかって書いて渡したじゃない、
おぼえてない?」

「おぼえてない!」
治はきっぱりと否定した。
「彼女返事がなくて落ち込んでたわよ」

「知らないよそんなこと。だって好きとか嫌いとかわからないよ小学生じゃ」
治はむきになった。ここぞとばかり宮本は食い下がる。
真剣なまなざしで、立ち止まり、

「じゃあ、今はどうなの?」
じっと治を見つめる宮本。思わず治も児玉も立ち止った。

「いや、それは・・・。それこそ妹みたいで。何というか
嫌いじゃないし。ちょっと太めだけど、どちらかというと、
好きだったかも」

3人はまたゆっくりと歩きだした。勝ち誇ったかのように宮本は、
「ほら見てごらん。はっきりと言ってほしかったのよ彼女。
その一言で幸せに死ねたのに。男ってホント鈍感なんだから」