聖が。

 ―――死?

「うそだっ……!」

 気がついたら大声で否定していた。
 呼吸も思うままにできない。荒く浅い息を繰り返しながら、幼なじみであり、親友であり、かけがえのない仲間であるひとみを睨みつけた。
 冗談でも仲間を傷つけるのは、許せない。
 聖が死ぬなんてありえない。
 一年中頭の中はお祭り騒ぎで、馬鹿ばっかりいって、殴ってもへこたれない不死身のような聖が死ぬなんて、絶対にありえない。
 そう考えているのに、次第に弱っていく聖を前にすると見えない不安に押し潰されそうになる。弱い気持ちに負けてしまいそうになる。
 気持ちを強くもっていようとしても、目の前で起こっている現実が、強い意志を打ち砕こうとしている。

「明美、和己……っ」

 その時、横たる聖が頭をもたげ、明美と和己を真っ直ぐに見つめる。

「聖……」

「俺のこと……殺せ……‼」

「‼」

「なにいってんだよ!」

「はや、く……っ」

「なに、バカなこといってんのさ! そんな冗談笑えない……聖、そんなの絶対、絶対だめだっ」

「ゾンビになんかになりたくねぇんだ。へ、へへっ……お前らに殺されんなら、本望だぜ」

 首を振る明美に、無理やり笑顔を浮かべ、聖はがくりと首を落とした。

「いやだっそんなこと出来ない……っ! 聖っ聖……!」

「明美」

 力強い腕が、明美を元気付けるように肩を叩いた。

「落ち着け。まだ諦めるな」

「和己……」

 静かな瞳が、明美の心を静めていく。
 やがて和己を見返す明美が頷く頃には、吹き荒れる嵐のようになっていた気持ちも落ち着いてきていた。
 聖をなんとかしてあげなければ。そのためにはひとみの力が必要だ。