教室内に視線を走らせる。
 すると教室の隅で、自分を抱きしめるようにして小さく縮こまっている聖を見つけた。

「聖!」

 ひとみを気にしながらも駆け寄る。

「あ……うあ……」

 意味不明な言葉を呟きながら、怯えたように青白い顔をしていた。視線は宙をさ迷い、定まらない状態で、寒さに耐えきれないように体を震わせている。その様子からは、いつもの明るい彼らしさがうかがえなかった。

「聖!」

 その肩に手をやると、ビクッと飛び上がる。

「やだ……やめろ!」

 逃げるように手を振り払い、暴れ出す。やみくもに振り出される手に構うことなく、明美は聖の頬を両手で挟み、顔だけでも自分のほうに向くようにした。聖の頬は驚くほど冷たく、とっさに手を離してしまいそうになる。
 そう、まるで死人のような……。
 そんなことあるわけない!
 不吉なことを考える自分に腹が立った。

「聖! 私だっ明美だよ‼」

 頬を軽く揺さ振りながら、その瞳がこちらを見てくれることを祈った。