「ひとみすげー! けど、体のほうは大丈夫なのか? いよいよ復活かっ!?」

 聖が二階の窓に立つひとみを、雪の舞う中、顔に手をかざしながら見上げた。

「えへっ完全復活だよ」

 元気な答えが返ってきた。声からして笑っているようだが降る雪に隠され、その表情をはっきり見ることができない。
 さっきまで寝込んでいたはずのひとみと聖が話し合っているのを、現実味が感じられないまま明美は見ていた。その彼女の前に和己が屈み込む。

「……大丈夫か」

「あ、うん。だいぶ楽になった。けど……」

 複雑な思いで、再びひとみに視線を移す。
 ひとみの元気な姿をなぜか素直に喜べない自分がいる。
 体力もあんなに落ちていたのに、こんな急に元気になるなんてことあるのだろうか?

「斎神父に教えてもらった技なの!」

 けれど、笑って答えているひとみは、ひとみそのものだ。
 じゃあ今朝から続く、この胸騒ぎはなんなの?

「聖くんお願いがあるの~ちょっと上がって来てくれる?」

「お? お、おぅ」

 一瞬、和己と明美を置いて先に行くことが名残りおしいのか、「早くこいよ」と言い残し、後ろ髪引かれつつ校舎の中に入って行った。
 聖とひとみの会話になぜかしっくりこない。

「立てるか?」

 手を差し伸べる和己に手を差し出す。握られた手は引っ張られ、立ち上がるのを助けてくれた。まだ力が入り切らないのか足が震える。その間も考えるのはひとみのことばかりで、なぜか頭の中では警鐘がなっていた。
 さっきのひとみの悲鳴はなに?
 どうして急に元気になった?
 そして……仲間を信じるなといった少年の言葉。

「なにか変だと思わない?」

 よろけないように、腕を支えてくれている和己の瞳を見上げた。

「ひとみか?」

「………」

 黙ったまま頷いてハッと顔を上げた。違和感を感じた原因のひとつに思い当たった。