「本当に! その力、私が欲しいくらいで」

「……行くよ」

 斎を見ることなく、身をひるがえして校舎へ向かう。

「……?」

 違和感を感じて足を止めた。地面がわずかに動いた気がしたのだ。

「どうかしましたか?」

 後ろから斎が声をかけてくるが、それを無視して警戒しながら地面をじっと睨みつけた。

「!」

 足元の地面が揺れる。
 ゾンビだ。

「下がって!」

 斎に避難を呼びかけ、その場を跳びのこうとした明美の足が動かない。自分の足元を見ると何者かによって掴まれていた。

「くっ……!」

 一瞬にして視界が反転した。足を引っ張られそのまま引き吊り上げられた。宙吊りにされている間にも、自分の周りから次々とゾンビが地上に姿を現している。

「明美さん!」

 斎が悲痛な声を上げた。

「私は大丈……うあっ」

 体はもろいくせに、怪力を秘めるゾンビの馬鹿力が足首にかかる。骨が悲鳴を上げ、痛さに顔が歪む。
 痛さにばかり気を取られないように、懸命に意識を集中させた。逆さのまま剣を握ると、力任せにそれを振りかざした。肉を切り裂く確かな手応え。手首を落とされたゾンビが奇妙な声を上げる中、明美は地上に投げ出される。

 しまった!

 すぐに起き上がろうとするも、周りは既にゾンビに囲まれていて、逃げる術はない。
 さっきの三体は囮だったんだ。まんまとはめられた……!