買い物の帰り。
 ひとみの事を考えているのか、明美はずっと口数が少なく、俯くように足元を見ながら歩いていた。それをじっと見つめていた聖が、

「寂しいのか?」

 食料の入ったビニール袋をぶら下げ、つぶやくようにいう。

「う、ん?」

 問い掛けた言葉もはっきり聞こえなかったのか、なに? とこちらを見ている。

「今朝から気になってたんだけどよ、ひとみのこと考えてたんだろ?」

「え?」

 なんでわかるの? といいたげな顔。
 そりゃいつだってお前のこと見てるんだから、小さな心の変化だってわかるさ。
 今朝、斎の背中を見る明美は寂しそうだった。
 ひとみから頼られるのが、自分じゃないことに寂しさを感じているんいるんだろう。
 幼なじみで、長い付き合いの明美とひとみ。
 俺にも見えない絆で、繋がっているんだと思う。
 そのひとみが、明美ではなく斎を頼るようになっていたとしたら、寂しいと感じるのが普通だ。

「なんかさぁ最近のひとみって、起きてるときは、斎とばっかりいる気がするんだよね」

 空を見上げながらぐちっぽくこぼす。
 その背中は頼りなく、寂しげで聖には小さく見えた。

「なんだ拗ねてんのかぁ?」

 聖は両手をズボンのポケットに突っ込みながら悪戯っ子のような笑みを浮かべて、明美の顔を覗き込んだ。

「拗ねてなんかない!」

 フンと顔を反らす。

「ひとみのやつ、ひょっとして斎のこと――」

「それは絶対ない」

 斎のこと好きなんじゃないのか? といいかけた聖の言葉を遮った。
 断言する明美に対し、そうかぁ? なんて首なんか傾げてる。