さっきから険しい表情で窓の外を見たまま、黙り込んでいる和己が気になっていた。

「……いや」

 明美に視線を移し、僅かに表情を和らげ短く答える。

「ここのところ口数が少ないよ?」

 元々口数が少ないのに、今では話し掛けなければ、一日に一度声を聞くか聞かないかという状況だった。

「……最近、寒くなってきたな」

 明美の問いに答えることなくつぶやくと、紅葉が過ぎて落ち葉が多くなった窓の外を、再び険しい顔つきで見つめた。
 和己、どうしちゃったの? 聖に目で問い掛けると、俺もわかんね、と首を傾げるだけだった。


「わあ!」

「あ? なんかいった?」

 とある日の晴れた午後。明美たちが寝ているひとみを囲むようにして見守っているところで、今の悲鳴。

「斎神父の声じゃないか?」

 明美、聖、和己の三人が顔を見合わす。
 斎は日課と称して今の時間、学生たちが帰ってきたとき殺風景なのはかわいそうだからという理由で、校舎前の花壇に水をやっている。

「なにかあったのかも」

「ゾンビか!?」

「気にすることないんじゃないか? あいつ、強いんだろ」

 明美と聖が立ち上がりかけたところで、あまり斎に感心なさそうな和己が、放っておけよ、と突き放すようにいう。

「あ、うん……」

 顔を見合わせ、明美と聖が再び腰を降ろした。
 どうも最近、和己の機嫌が悪いように感じる。
 この間からこんな感じだし、気のせいなんかじゃない。
 何が原因なのかわからないけど、それがなんなのか聞きづらい雰囲気があって聞くに聞けずにいる。