「……そうだったんですか。それでは、ひとみさんが元気にならないことには心配ですね」

 沈んだ空気の中、話を聞き終わった斎がポツリといった。

「俺らの力だけで対応できる数に、限界があるからな」

「くやしいけどね」

 聖に明美も頷く。

「これからは私もあなたたちと戦います。ひとみさんのような力はありませんが」

 気弱そうな笑顔を浮かべながら、胸元に下げている十字架に手を添え、頭を下げた。

 斎が仲間になった。
 心から信頼しているわけじゃないけど、正直いまは味方が一人でも多い方がいい。
 斎には和己たちと同じ部屋で寝てもらい、夜の見張りの交代も一人増えただけでもローテーションが楽になった。
 時々部屋を訪れては、ひとみの様子も見てくれていた。

 診察の時は私も部屋から出され、和己たちの部屋で診察が終わるのを待つ。

「ひとみ、良くなってるのか?」

「かわらない」

 聖の問いに首を振る。

「最近ゾンビたちに動きがないな」

「ひとみがあんな状態だし、襲撃がないのには助かってるけどさ」

「でも油断はできないよな。いつ襲ってくるかわかんねぇんだもんな」

「………」

 和己は明美と聖の会話に参加することなく、窓の外を見ている。

「和己、怒ってんの?」