明美たちの前に助っ人と称して現れた一人の男。
 名は、斎要。
 胸に十字架を下げ、黒い服に身を包んだ細身の長身。年上(23歳)の、いちよう神父らしい。
 明美たちが大量のゾンビに囲まれ絶体絶命となったとき、突如現れ、一瞬にしてゾンビたちを一掃してしまった。
 しかし本当に信頼できるのか、頼もしい味方となるのか不安もあった。

 明美たちの前で思いきりこけ、立ち上がると斎は服に着いた汚れを払いながら笑顔を浮かべる。

「いつも三人で戦われているんですか?」

 最初は警戒していた明美たちも、神父の立派ともいえるコケ振りや人あたりのいい雰囲気に、持っていた武器を下げていた。

「もう一人、大事な仲間がいるよ」

 辛そうなひとみを思い、自然に苦しげな表情になってしまう。

「その方は?」

「ちょっと疲れてて上で休んでる」

「診ましょう」

 柔らかい笑顔一転、表情を引き締め、少しぐらいなら医者の知識もありますと、明美たちと共にひとみが眠る家庭科室へ向かった。
 教室内へ入ると斎は、誰の案内もないまま勝手にひとみの元へ向かっていく。

「あ、ちょっと!」

 仮にも女子の部屋。一人で先に行く斎に明美が静止の声をかけるも、振り向きもしない。
 さっさと行ってしまった斎を追い掛けると、ひとみの側に座り込み、眠る彼女の額に手を添えているところだった。

「!」

 驚いたようにひとみが目を開け、斎の手をふり払い飛び起きた。

「だ、誰なの……!?」