「………」

 祈る体制のまま、ひとみは動かない。

「もう大丈夫。やつらいなくなった」

 ひとみの肩に手を置くと、はっとしたような顔を上げる。

「明美ちゃん……?」

「とりあえずもう安心だから」

 その言葉に、青白い顔色のまま力無い笑顔で頷き、立ち上がりかけてよろめいた。

「ひとみ!」

 慌てて明美が支え、尋常じゃないその様子に和己も聖も駆け寄る。

「大丈夫か!?」

 明美に支えられているひとみは、眉間を寄せて辛そうにしている。

「運んでやったほうがいい」

 和己が明美の替わりに前へ進と、小さく大丈夫だからというひとみの背中と両膝の下に腕を回し、抱え上げた。

 そのまま寝室にしている部屋まで連れていき、布団に寝かしつける。横になるのを見届け、心配そうに覗き込んでいた聖と和己が、部屋から出ていく。

「今はゆっくり休みな?」

 布団の中から顔を出すひとみの側に座った明美が、落ち着かせるように笑った。

「うん。ごめんね……」

 素直に頷くとひとみはまぶたを閉じた。すぐさま小さな寝息が聞こえてきた。
 戦うばかりの自分達には『マリアさま』であるひとみの荷の重さをわかってやれない。ひとみは自分たちに聖なる祈りで力を与えてくれるが、そのひとみに力を与える者はいない。守ってあげることは出来ても、メンタルな部分までは守ることはできない。
 静かに眠るひとみの姿に、安心した明美が小さく笑いながら息を吐く。

「………」

 あのまま戦いが続いていたらと思うとぞっとする。
 まるで総攻撃をくらったような気分だった。 
 体は疲れ切ってはいるが、神経はとがっていてとても眠る気になれない。
 ちょうどその時、マナーモードにしていた携帯が震えた。