「1階か?」

 さっきまでのひょうきんな顔はどこへやら、聖は真剣な表情を浮かべ立ち上がる。

「そうみたいだね」

 怒った表情を浮かべていた明美ももう、戦いを前に控えた顔で立ち上がる。

「油断大敵、だね」

 ひとみも意を決したように、両手を組んで立ち上がった。

「……行くぞ」

 今まで手入れをしていた槍を、気合を込めて一振り。和己が立ち上がり、それぞれが武器を持つと、頷きあう。
  
 4人が1階へ向かう間も、次々と窓ガラスが割れる音が耳に聞こえていた。 
 全員が下に下りる頃には、たくさんのゾンビたちが教室から廊下へ現われ始めているところだった。

「凄い数……!」

 ひとみが驚愕の声を上げる。

「ったく、窓ガラス割って入ってくんなっての。玄関から入るのがマナーってもんでしょ!」

「なまった体は、倒しながらほぐしていくしかないみたいだね」

「……そのようだ」

 ひとみを守るように聖、明美、和己が彼女の前に立つ。

「ストレッチぐらいさせて欲しかったんだけど!」

 細剣を握り締めた明美が不適に笑う。

「え? ひとりえっち!?」

 両手に剣を構えた聖が、嬉しそう顔を輝かせながら振り向いた。

「なんでそんな聞き間違いをするかな!? 私はストレッチっていったの! 耳腐ってんじゃないのっ?」

 怒りで顔を真っ赤にさせた明美。聖に切りかかりそうな勢いだ。

「前! 前見て!」

 祈るように手を組み合わせた格好のひとみが、注意を呼びかける。 

「さぁてと、いきますか!」

 それぞれの武器を手にゾンビに向かった―。