「確証があるわけじゃないんだけど、今まで出会ってきたゾンビたち……自分の意思で人を襲ってるわけじゃない気がするの。確かに攻撃的だし、ゾンビたちの声も聞こえないけど、誰か……何者かに操られているんじゃないかな、って。だからひょっとしてここに眠っていたはずの人たちも、無理やり起こされて操られているのかもしれないって思うの」

 いつになく真剣な表情でひとみが、明美、聖、和己の顔を順々に見る。
 特別な力を持つ、「マリアさま」のひとみが言うこと。他の三人が感じない「なにか」を感じていたのだろう。
 確かにそう考えると、納得できる部分がいくつかある。
 コンビニに買い物へ行った帰り、同じ場所で2度も襲ってきたこと。霧の濃い山道脇にまるで待ちぶせていたかのように、隠れていたゾンビたち。

 ゾンビたちを操る黒幕がいる――!?

「もしそうだとしても、ゾンビを操っている奴を知る方法がないよね」

「……難しい状況だな」

 明美がどうしようもないと唸り、目を閉じ腕を組んだ和己がつぶやく。

「………」

 八方塞がりな状況に、重い空気が漂う。 
 それを破ったのは、明るい聖の声だった。

「果報は寝て待てっていうじゃん! 意外と向こうさんから来てくれるかもしれないぜ!」

 なっ! と誰よりも前向きな精神で、一人一人に笑顔を向けていく。
 重かった空気を軽くするこの天性の明るさに、聖が仲間でよかったと思ったのは明美だけではないはずだった。

「ここに眠っていたはずに人たちを早く解放してあげたい」

 しんみりするひとみの肩を、元気つけるように明美が叩く。

「そうだね! 私たちで何とかしてあげよう!」

 明美の言葉に、聖も和己も大きく頷いた。