「うん、血色もいいし、大丈夫そうだな」

「……は?」

 な、なに?
 うろたえる明美に対して、和己はいたってポーカーフェイスで。

「風邪、引くなよ」  

 そういうと、明美の顎にかけている指を離した。

「はぁ、どうも」

 焦った。キスされるのかと思った。
 って別に、キスを待ってたわけじゃないけどね‼

 いちよう心配、してくれたってことだよな……?
 なんか前にもこんなことがあったような。いつも和己に振り回されているような気がするのは、気のせいか?
 聖なんて最初からあんなノリがよくておバカだから凄く扱いやすいけど、和己って真面目なのか、冗談でやってるのかよくわかんない。
 なんていうか、自分のペースを乱さない奴だよ。
 この私が振り回されるなんて、ちょっと悔しい。

「行くぞ」

 先に洞穴を出た和己が振り返り、考えにふけっていた明美が慌ててその後を追う。