「光成とは異母兄弟、つまり父親が同じなんだ」

「へぇ」

「へぇってそれだけか?」

 明美の反応に呆気に取られる。

「ああ! だから名字違うのか!」

 ぽん! と手を叩いて頷く明美の反応に、肩透かしをくらったような顔になる。
 和己が思っていた反応と全然違うその様子に、今までさんざん悩んでいた自分がバカらしくなってくる。引きつっていた顔が、だんだん崩れてそこには笑みが浮かんだ。 
 なんだ。本当に簡単なことだった。
 今まで自分を苦しめていた見えない鎖が、解かれたように、開放感が和己を包む。

「くしゅん!」

 くしゃみをした明美が寒いのか、体を震わせる。

「寒いのか?」

「うん、ちょっと……」

 見れば、唇が紫色に変色している。このままだと風邪を引きかねなかった。
 雨の降りは少しおさまっている様だ。もう少し待てば、霧も晴れるかもしれない。それまでは下手に動かず、ここにいたほうが安全だろう。
 外を見た和己は静かに立ち上がる。

「?」

 何を始めるんだろう? 明美の視線が追う。その明美のとなりに並ぶように和己が座った。

「少しは寒さ、凌げるだろ?」

 そういうとポーカーフェイスの和己は、明美を引き寄せた。
 膝を抱えるように小さくなっていた明美が、そのまま和己の腕の中に納まる。

「う? ちょちょっと!?」

「なんだ」

 自分のすぐ横にある和己の顔が近づく。その様子に頬を染めた明美が、金魚のように口をパクパクさせる。

「あ、う……」

「寒いよりいいだろ? 少し我慢しろ」

 和己はいっそう強く、明美を抱きしめた。