ここ最近――植物のゾンビと戦って以降、携帯が使えない不便さを和己は感じていた。 
 携帯どころか物も持てない。手の平を握る行為をしただけで痛むのだ。無理をすると傷口が開くため、ほとんど何もできない状態だった。
 そんな自分がもどかしく、他の皆の重荷になっているような思いに、気が重くなる。
 自然と、かもし出す雰囲気に刺々しさが現われてしまい、ひとみなどは怖がって近くにも寄らない。
 唯一の交流手段である携帯が使えず、焦れば焦るほど、距離を感じた。
 変わらず気軽に話しかけてくる聖、俺と話す機会をうかがう明美、どちらにも監視されているような錯覚に陥った。
 心地よいと思い始めていた空間が、息苦しくなっていた。
 いっそ使い捨ての商品のように気持ちを切り替えることができたなら楽なのに。

「……話したところで、俺は受け入れられるのか?」

 仲間を裏切ったあいつと同じ声の俺を。

「光成と同じ声のこと気にしてんのか? 難しく考えることないと思うぞ? 始めて和己の声を聞いたときは、さすがに俺もビックリしたけど、あいつはあいつで、和己は和己じゃんか。たかが同じ声だろ?」

 なにも難しいことじゃないと、口元に笑みを浮かべた聖が和己の顔を覗き込む。

 たかが同じ声。

 半分同じ血が流れていながら、まったく違う環境で生まれた兄弟。自分が不幸だなんて思わないが、全てに恵まれながら表舞台から逃げ出した光成と、同じ声の自分は恥ずべき存在なのだと思い込んでいた。
 チームを組むと決めたとき、チームワークを乱さないためには自分は、話すべきではないと言い聞かせた。
 団結力が強くなればなるほど、光成と同じ声の自分がますます嫌いになっていく。それと同時に、明美たちには声を聞かせることは絶対にできないと強く感じた。女性陣が聖と同じ様な態度を取るとは考えられなかった。嫌悪するような顔で見られることが怖かった。

 たかが同じ声。

 同じ声であることをひたすら気に病んでいた俺には、そんなふうに考えることも出来なかった。