「……ッ!」

 飛び起きて、となりを見ると聖が心配そうな顔で見ていた。

「あー……なんかうなされてたみたいだったからさ、大丈夫かと思って」

 起こした後で後ろめたさを感じたのか、聖が頭をかきながら申し訳なさそうに和己を見ている。
 時はまだ深夜。ゾンビの急襲に備えて、夜は一人一人交代制で番をすることになっていた。聖が起きて薄暗い外を見ていたとき、和己の様子がおかしいことに気付いた。
 ただ事じゃない気がして起こしたというわけだった。

「いや。いやな夢見てたから助かった」

 うっすらとかいた汗のせいで、シャツが素肌にへばりついて冷たい。 
 少し離れたところで眠っている明美もひとみもまだ眠っているのを確認して、濡れたシャツを脱いだ。鍛え上げられた上半身が露わになる。

「ッ!」

 握り締めた手の平が熱い。僅かに顔をしかめ、ゆっくり開いた手の平には白い包帯が巻かれている。
 怪我をしたての頃よりはマシだったが、見た目より傷が深かったのか、治りが遅く手に力を入れると痛みが走った。

「あまり、無理すんな」

 聖が変わりに、着替えを出してきた。

「まだ交代まで時間あるんだから、十分睡眠はとっておいたほうがいいぞ?」

 気遣う聖に、礼をいいながら新しいシャツを受け取る。

「いや、いい。起きる」

 真新しいシャツに袖を通した和己の横に、よっこらしょとおどけながら聖が座った。

「なぁ、明美たちと話せないことに限界を感じないか?」

 言葉が重くならないように、目を合わせず天井を見上げた聖が問う。