絶望の中で 

 それ以来絶対会わないと、二度と会うものかと決めたのに。


 高校はゾンビバスター養成学校入った俺は、全寮制で、やっとあの親父の監視下から外れることが出来た。
 ここにいる間は自由なんだと、自分に課された「聖戦士」になるための試練に喜んで打ち込んだ。

 全てがうまくいくと、思った矢先――。
 新入生の中に、同じ血を分けた弟の姿を見つけた。

 うそだろ?
 平穏だった俺の心が凍りつく。

 俺の前で俺と同じ声で、幸せそうに笑うお前の顔など、見たくもない。

 俺がなにをした? なぜ、俺の前に現われる?

 元々口数の少ない俺は、ますます無口になっていく。
 
 そして―――。
 1学年から初の『マリアさま』が誕生した。
 ひとみのことだ。
 そのチームに、弟の姿はあった。 
 後から来たあいつのほうが名誉を手にして、先に寮を出るのか。
 どんなに頑張ろうと俺には一生陽はあたらないのか? 日陰で暮らすしかないのか。
 どす黒い気持ちが心の中に広がっていく中で、突然呼び出された校長と一緒にいたのは、俺にこんないやな気持ちを教えた親父だった。 

「君の弟くんが『救世主』を辞退した。したがって君が代わりに行く気はないかね?」
 
 校長の声に驚いて顔を上げると、

「無事救世主として任務を全うし、帰還してきたお前には私の会社を継いでもらう」

 なにを血迷ったのか、親父がそんなことを言い出した。

「光成には失望した。やはり有能な者が私の後を継ぐべきなのだ」

 あっちがダメならこっちかよ?
 ふざけるな! 
 俺らは捨て駒なんかじゃない‼

 お前の後を継ぐなんて冗談じゃない‼
 望まれて、操り人形のように俺が素直に従うとでも思ってるのか? 

 だったら……

 生きて帰ってきて

 あんたの会社、のっとってやるよ――。